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「デュタステリドの効果」

2019.08.31

デュタステリドという成分がAGA治療に効果的な新薬であるとして2015年に厚生労働省に正式に認可されました。

薄毛治療薬でも効果が出にくいとされているM字型脱毛に効果があるとも言われるデュタステリドの効果やAGAへの作用、副作用などについて説明していきます。

デュタステリドとはどういう成分なのか?

デュタステリドは、イギリスのグラクソ・スミスクライン社が2001年に前立腺肥大症の治療薬として開発・発表された「アボダード(日本名ではアボルブ)」に含まれる成分です。

前立腺肥大を抑えるため男性ホルモンのジヒドロテストステロンを過剰分泌させる作用のある5αリダクターゼを阻害する作用があります。これは、前立腺肥大だけではなく、進行形の男性型脱毛症であるAGA治療にも効果があることがわかりました。

デュタステリド成分の入ったAGA医薬品「ザガーロ」は、2015年9月28日に厚生労働省がAGA治療薬として認可をし、2016年6月13日からクリニックでの処方が開始された新薬です。

デュタステリドをAGA治療薬として認可している国は?

先ほども述べたように2015年に厚生労働省が認可をしましたが、海外でもAGA治療薬として認められています。

しかし、アメリカやヨーロッパなどではまだ認可がされていません。2009年に韓国が認可し、日本は2番目に認可しています。アメリカ食品医薬品局(FDA)では、フィナステリドを1997年に認可したきりでADA治療薬を認可していません。

フィナステリドが圧倒的に発毛成果をあげていたことや認可審査には莫大な研究資料や治験の結果報告が必要なことからグラクソ・スミスクライン社は認可申請を辞退していました。

現在は認可申請をしており、認可を受けるための審査のフェーズ3(投与量の適量試験)段階に入っていますがまだ認可はされていません。ただし、認可を却下されたわけではありません。

近年日本が認可したことで、今後、世界的にデュタステリドの認識が高まると言われています。

デュタステリドのAGAへの効果とフィナステリドとの違いとは

AGAの薄毛のしくみとデュタステリドの効果

デュタステリドの効果を説明する前にAGAはなぜ薄毛を発症してしまうのかについて見てみましょう。

AGAは、男性ホルモンに含まれるテストステロンと頭皮などに存在する5αリダクターゼという酵素と結合してジヒドロテストステロンに変化します。このジヒドロテストステロン(DHT)は、強力な男性ホルモンで髪の毛の正常なサイクルを狂わせてAGAの抜け毛症状の原因となってしまいます。

デュタステリドは、5αリダクターゼを阻害する働きがあるため強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロンが生成されにくくなり、髪が抜けにくくなるというメカニズムとなります。

5αリダクターゼには2種類ある

テストステロンと結合すると抜け毛の原因であるジヒドロテストステロンを生成してしまう5αリダクターゼですが、1型と2型が存在します。

1型5αリダクターゼは、前頭部・側頭部・頭頂部・高等部・脇の下・陰毛部分などの皮脂腺に存在しており、脂性肌の人に多い酵素です。全身の体毛の抜け毛が起こります。

2型5αリダクターゼは、前頭部・頭頂部・ヒゲの毛乳頭に存在しており、体毛やヒゲなどの濃い人に多い酵素です。この2型5αリダクターゼは、テストステロンと結合するとジヒドロテストステロンの中でも強力なものを生成してしまいます。

デュタステリドは、1型5αリダクターゼと2型5αリダクターゼの分泌を阻害する効果があるため、1型5αリダクターゼを阻害するフィナステリドよりもAGA治療に効果が高いとされています。

フィナステリドを対照とした第Ⅱ/Ⅲ相国際共同試験(第Ⅲ相試験:非劣性試験 )の結果でもフィナステリド1mgの毛髪変化量とデュタステリド0.1mgの毛髪変化量が同じくらいであることやさらにデュタステリド0.5mgの毛髪変化量は、フィナステリド1mgの1.5倍でありその効果の高さがよくわかります。

デュタステリドの副作用について

効果が高いということは、それだけ体に大きな影響があるということですので不安に感じる人も多いでしょう。日本皮膚科学会のガイドラインでは、男性への推奨度はA「行うよう強く勧める」とされていますが、女性への推奨度はD「行うべきではない」とされています。

ガイドラインとザガーロに添付されている文書によるとデュタステリド成分の副作用は、リビドー現象・インポテンツ(勃起不全)・射精障害・性欲減退・乳房障害(女性化乳房・乳頭痛・乳房痛・乳房不快感)・肝機能以上・黄疸などが記載されています。

性的副作用に関しては、長期服用で落ち着くともされていますのでクリニックや薬剤師に相談しながら継続して様子を見るといいでしょう。また、前立腺がんマーカーの数値がデュタステリドによって1/2になってしまうため前立腺がん診断の際は、服用を告げて数値を2倍にする必要があります。

上記副作用を色々とあげていきましたが、厚生労働省で処方を推奨されているれっきとした治療薬です。

また、アメリカではフィナステリドの治験結果でポストフィナステリド(PFS)症候群というノセボ効果(ノシボー効果・ノーシーボ効果・反偽薬効果とも言います)が問題になりました。

ノセボ効果とは、思い込みによって引き起こされる副作用の症状などのことを言います。ポストフィナステリド症候群の場合は、フィナステリドの服用をやめた後も副作用が続くという症状がありました。

このように、人間の心が引き起こす体への作用は意外にも大きいものです。デュタステリドがあまりに発毛効果があるためノセボ効果で副作用を感じる人がいても不思議ではないのです。

用法容量を守らずに服用したり、自分の体調を把握しないまま個人輸入で服用したりせず効果と副作用を理解した上でクリニックで医師の指導の元処方してもらえば心配はないといっていいでしょう。

デュタステリドを使ってはいけない人

デュタステリドは、女性・子供・未成年・重篤な肝機能障害を持った人は服用してはいけません。

特に日本皮膚科学会のガイドラインには、妊婦の場合、「男子胎児の生殖器官等の正常発育に影響を及ぼすおそれがあり女性への投与は禁忌」とされています。
引用元:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

さらに、デュタステリドは血液中での持続時間が長いため、服用中~服用をやめて6ヶ月は献血をしてはいけません。献血した血液が、子供や妊婦に使用されないとは限らないからです。

同じように、精液中にも成分が移行します。その精液によってできた胎児に影響を及ぼす可能性は低いと考えられていますが、可能性がゼロではないため将来子供が欲しいと考えている男性は服用を避けた方が安心です。

血中濃度の半減期は3~4週間ほどとされていますので、将来を考えて妊活を~と思ったら1ヶ月~半年前から服用をやめましょう。

初期脱毛とリバウンド脱毛

初期脱毛は、デュタステリドの効果が出ているという証拠なので副作用として紹介するものではないかもしれません。初期脱毛は、弱く細い髪の毛が服用によって抜けていくことで服用から2週間~1ヶ月ほどで脱毛しはじめ、脱毛から1~2ヶ月、長くても3ヶ月で治まります。

これを乗り越えて抜け毛が減っていくため通過儀礼とも言われています。これを知らないとあわてて服用をやめてしまい、効果を感じることができませんのでしっかりと把握しておきましょう。

また、リバウンド脱毛ですが、こちらも副作用という表現はふさわしくありません。デュタステリドの服用を途中で中止した時に男性ホルモンを抑えていた反動で強烈な脱毛が起こると言われていますが、そのようなデータも科学的根拠も存在しません。

デュタステリドの服用によって抑えていたAGAの症状が、服用をやめたことで元に戻って薄毛になってしまうというだけのことです。

デュタステリドの効果はどれくらいで出るのか

デュタステリドの効果が出る期間の前に、通常の髪の成長サイクルとAGAの場合の成長サイクルを見ていきましょう。

通常、健康な頭髪の人の髪の成長サイクルは、成長期(2年~6年)→退行期(2週間前後)→休止期(3ヶ月前後)で2年~6年の間毛根で育てられたしっかりとした髪の毛が生えていきます。

しかし、AGAの人は、ジヒドロテストステロンの影響や血行不良によって成長が阻害されているため成長期(数ヶ月~1年程度)→退行期(2週間前後)→休止期(3ヶ月前後)
となっています。

成長期が特に短い以外は同じサイクルですが、成長期が短いということは髪が十分に成長する前に表面に生えてきて抜けていってしまうということになります。

デュタステリドを服用することで5αリダクターゼが抑制され、髪の成長を阻害するジヒドロテストステロンが生成されにくくなり、髪が抜けにくくなっていきます。

まず、服用から2週間~1ヶ月ほどで初期脱毛が起こります。脱毛から1~2ヶ月、長くても3ヶ月で治まります。初期脱毛を乗り越えたら、服用から3ヶ月ほどで抜け毛が減ってきたり、産毛が増えたと感じます。

しかし、髪の毛が増えたと実感するほどは伸びていませんので髪が伸びて実感するまでには6ヶ月は様子を見たいものです。

効果の出にくい人とは

効果が高いと言われているデュタステリドですが、効果の出ない人はいるのでしょうか。
まず、効果が実感できる6ヶ月以上の継続をせずに服用をやめてしまった場合は、効果を感じることができません。

また、髪の生えるサイクルは、回数が決まっています。AGAの人のサイクルは成長期が短く、回数をどんどんと消費してしまっているため毛根の寿命を早く迎えていることがあります。

髪が抜けきっている、重度の薄毛の人は毛根の寿命がきてしまっているため、効果は期待できません。ザガーロの添付文書に載っている臨床試験でも重度のAGAの人は治験対象とされていません。

AGA治療は早いうちに・・と言いますが、デュタステリドは年齢が上がっても効果があります。年齢が上がってからでは効果がないのでは・・と不安に思っている人は、自分がどれくらいの薄毛段階にあるのかを確認してみるといいでしょう。

残念ながら、デュタステリドでもジヒドロテストステロンを抑制しきれないほど強い5αリダクターゼの影響を受ける体質というのは、遺伝します。そのため、AGAの症状で原因もジヒドロテストステロンであったとしても、薬の効果が出にくい人がどうしても出てしまうことは知っておきましょう。

デュタステリドには耐性が出る?

インターネットでAGAやその治療薬について調べてみると「デュタステリドは耐性が発生する可能性がある」という記載がちらほらと見られます。確かに薬品によっては身体が抗体を生成してしまい、効果が薄れていくことがあります。

デュタステリドは、AGA治療に関して5年以上の長期的な経過観察が行われておらず耐性に関してのデータがないため可能性が否定できないというのが実際のところです。

しかし、前立腺肥大症の薬としてデュタステリド成分が配合された治療薬が登場したのは、2001年です。その間に、薬に対して耐性ができたというデータや効果が落ちたというデータは存在しないためデュタステリドによる耐性は出ないと考えていいでしょう。

フィナステリドと交互に服用することをオススメする記事なども見かけますが、そのような記事にあるように3ヶ月から半年ごとにデュタステリドとフィナステリドを交互に服用した場合、先述したようにデュタステリドの効果が出るのは3~6ヶ月ほど継続してからです。

また、服用をやめた場合、血中に効果が得られる濃度で残るのは1ヶ月ほどでそれ以降はどんどんと薄くなっていきます。そうなると、服用から3~6ヶ月でやっとデュタステリドの効果を実感したころに服用をやめフィナステリドの効果が出る前にデュタステリドの血中濃度はほぼなくなって抜け毛が増えます。

そして、フィナステリドの効果が3~6ヶ月服用して効果が出たころにまた服用をめるということでは、どちらの薬も意味のない服用をしていることになりかねません。医師の指導のもと、0.1mgまたは0.5mg配合されたデュタステリドを1日1回正しく服用することがAGA治療の近道だと言えるでしょう。

まとめ

新しく認可された効果的なAGA治療薬であるデュタステリドについてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。

新しい薬だから安全性が心配と思う人も少なくないかもしれませんが、世界中で前立腺肥大症の治療薬としてすでに使用されているため安心して服用していただけます。

あちこちに不安をあおるようなサイトは、たくさん見つけられます。自己判断はせずクリニックで処方してもらえば医師の指導の下、効果のある薬を安心して使うことができます。